無余無欠 「うーにゃん、ありがとね」 うーにゃんは毎日掃除の手伝いをしている。しっぽを巧妙に使って、人間の手では届かないところの埃をはらう。掃除を終えた後、ママにしっぽを洗ってもらう時が至福の時だ。役に立っていると実感できるからだ。 ネコが掃除をしているというのに、みゆはまだゴロゴロし…
曹源の一滴水 「ねえねえねえ、うーにゃん聞いて」 帰宅するや、みゆはうーにゃんが眠っている部屋に飛び込んできた。安眠をむさぼっていたうーにゃんはムッとするものの、大人の対応をする。 「また100円玉でも拾ったの?」 一週間前、みゆは100円玉を拾い、眠りにつくまで上機嫌だった。 …
大死一番絶後再蘇(大死一番絶後に再び蘇る) ひさしぶりの家族団らん。みゆとパパ、ママ、そしてうーにゃんが食卓を囲んでいる。 いちおう、うーにゃんにも専用の椅子がある。椅子の上に座ると、テーブルの上からちょこんと顔だけが出る。それを見て、みゆがクスッと笑った。 家族といっしょに食べるとき…
樹揺鳥散 魚驚水渾(樹揺れて鳥散じ 魚驚きて水にごる) 夜おそく、みゆがほろ酔い気分で帰ってくると、リビングの方でなにやらガサガサと音がする。 うーにゃんがなにかを探していた。長年、ニンゲンといっしょに暮らしているうーにゃんだが、夜型の生活習慣は変わらない。 「うーにゃん、なにしてるの…
「一無位真人」(いちむいのしんにん) うーにゃんは、みゆの足音だけで、彼女の心の風景が読める。ネコは字が読めなくても、いろいろなものが読めるのだ。 「ねえ、うーにゃん先生」 やっぱりきたかあと思いつつ、うーにゃんは眠ったフリをしていた。 「ねえ、うーにゃん先生ってば」 うー…
「無可無不可」(可もなく、不可もなく) うーにゃんが昼寝していると、誰かが覆い被さってきて目が覚めた。 うーにゃんは牝ネコで12歳。どこにでもいるキジトラだが、本人は高貴な系譜をひいていると思い込んでいる。田んぼのあぜ道に捨てられていたのを今のご主人に拾われ、以来、怠惰な生活をむさぼってい…